(レポート)日本のトラック業界における自動運転技術の現状と将来展望

はじめに
深刻化するドライバー不足や物流の効率化、安全性向上といった課題を抱える日本のトラック業界において、自動運転技術は大きな期待を集めています。特に、2024年問題と呼ばれるドライバーの労働時間規制強化を控え、自動運転トラックはまさに「救世主」として注目されています。試算では、2024年問題に対して何も対策を行わなかった場合、2030年にはトラック輸送能力が最大34.1%不足する可能性も指摘されています。 自動運転技術は、こうした課題を解決し、日本の物流を支える重要な役割を担うことが期待されています。
本レポートでは、日本のトラック業界における自動運転技術の現状と将来展望、そして政府の政策や主要企業の取り組みについて詳細に分析し、今後の展望を考察していきます。
日本のトラック業界における自動運転技術の現状
自動運転トラックの開発状況
日本のトラック業界では、レベル3(条件付き運転自動化)およびレベル4(高度運転自動化)の自動運転トラックの開発が進められています。レベル3は、高速道路など特定の条件下でシステムがすべての運転操作を行うもので、ドライバーはシステムの要請に応じて運転操作を引き継ぐ必要があります。一方、レベル4は、特定の条件下でシステムが完全に運転操作を行い、ドライバーは運転に関与する必要がありません。
レベル3自動運転トラック
レベル3自動運転トラックは、2020年4月に道路交通法と道路運送車両法の改正により、公道走行が可能となりました。 乗用車では、ホンダが2021年3月に世界初のレベル3搭載車「レジェンド」を発売開始しました。 しかし、トラック業界ではまだ実用化には至っていません。 これは、トラック特有の課題、例えば車体が大きく車重も重いため、より広範囲の確認が必要になること、ブレーキをかけてもすぐに止まれないこと、車線に合わせて走ることが難しいことなどが挙げられます。 しかし、各社が開発を進めており、いすゞ自動車は、2027年度にレベル4のトラック・バス事業を開始する予定です。
レベル4自動運転トラック
レベル4自動運転トラックは、2023年4月の道路交通法改正により、特定の条件下で公道走行が解禁されました。 政府は、2025年以降の高速道路でのレベル4自動運転トラックの実現、さらに2026年以降には社会実装を目指しています。
具体的には、高速道路に隣接する中継エリアを複数個所設置し、その間を自動運転する計画です。 2026年度にまずは有人の自動運転をスタートさせ、2030年度頃に無人化を目指しています。 また、将来的には一般道での自動走行も検討されています。
レベル4自動運転トラックは、特定の条件下で完全自動運転が可能となる技術ですが、システムが対応できない事態が発生した場合の対応が課題として挙げられます。 例えば、高速道路での分合流や路上落下物等の回避において、大型トラックは急停止や急な操舵が難しいため、余裕を持った車線変更ができない場合があります。 レベル4システムは、運行設計領域(ODD)内において、ほとんどの状況に対応できるように設計されていますが、予期せぬ事態が発生した場合には、フォールバックメカニズム(緊急時対応システム)が必要となります。
自動運転トラックの実証実験の状況
国内では、レベル4自動運転トラックの実用化に向けた実証実験が、空港や限定されたエリア、高速道路などで実施されています。
高速道路における実証実験
国土交通省は、新東名高速道路(駿河湾沼津SA~浜松SA)において、深夜時間帯に自動運転車優先レーンを設定し、レベル4自動運転トラックの実現に向けた実証実験を2024年度から開始しました。 この実証実験は、「RoAD to the L4」プロジェクトの一環として行われており、同プロジェクトでは、自動運転トラックの社会実装に向けて、車両技術の開発だけでなく、運行管理システムや必要なインフラ、情報の整備など、事業環境の整備にも取り組んでいます。
具体的には、2024年度に新東名高速道路(駿河湾沼津SA~浜松SA)に自動運転車優先レーンを設定し、車両開発と連携した路車協調(合流支援情報提供、先読み情報提供等)によるレベル4自動運転トラックの実現に向けた実証実験を実施しています。 実証実験では、路車協調による情報提供システムを利用し、深夜時間帯に自動運転車優先レーンを設定します。 2025年度以降は、東北道の6車線の一部の区間において実証を実施し、その後、関東~近畿をつなぐ実証区間以外の6車線区間や4車線区間へと展開し、さらに全国へ展開していく予定です。
また、高速道路の合流部において、自動運転トラック及び一般車両の双方が、安全かつ円滑な走行・合流を行うための路車協調による情報提供の有効性を検証するため、新東名高速道路(駿河湾沼津SA~浜松SA)において、合流支援情報提供と先読み情報提供の検証も行っています。
2025年3月3日からは、新東名高速道路において深夜時間帯に「自動運転車優先レーン」を設定し、車両開発と連携した自動運転トラックの公道走行の実証実験が開始されました。 実証実験では、「RoAD to the L4 テーマ3コンソーシアム」と「株式会社T2」の自動運転トラックが参加し、自動運転車優先レーンでの走行、自動駐車・自動発進、先読み情報提供システム、合流支援情報提供システムなどの検証が行われています。 2025年度以降は、東北自動車道(佐野SA~大谷PA)でも同様の実証実験を行う予定です。
その他の実証実験
いすゞ自動車は、2022年8~10月にかけて、神戸製鋼所と共同で、レベル4を搭載した大型トラックによる自動運搬技術の実証実験を行いました。 また、経済産業省と国土交通省が進める「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」に参加し、新東名高速道路での実証実験に向けた車両を開発中です。
ヤマト運輸は、ダイナミックマッププラットフォーム、BIPROGY、NEXT Logistics Japanと共同で、新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間で、自動運転トラックを用いた走行実証を2025年2月25日から27日に実施しました。 走行実証では、共同輸送における最適な運行計画立案や緊急事態対応支援などについて検証を行いました。
佐川急便は、セイノーホールディングスと共同で、東京・大阪間の高速道路の一部区間で、T2が開発した自動運転トラックを用いた幹線輸送の実証実験を2024年10月から2025年6月にかけて実施しました。 レベル4自動運転による幹線輸送の公道実験は日本初です。
日本郵便は、JPロジスティクスと共に、セイノーホールディングスとT2が実施する自動運転トラックを用いた幹線輸送の実証実験に2025年1月から参加しています。 施設と貨物を提供しています。
西濃運輸は、2025年1月から3月にかけて、T2、日本郵便、JPロジスティクスと共同で、自動運転トラックによる幹線輸送の実証実験を実施しました。
これらの実証実験は、自動運転トラックの実用化に向けた貴重なデータ収集の場となっており、今後の開発に大きく貢献することが期待されます。
自動運転トラックの導入に向けた課題
自動運転トラックの導入には、下記のような課題が存在します。
- コストの高さ: 自動運転トラックは、高度なセンサーやシステムを搭載するため、車両価格が高額になります。 自動運転システムの導入費用は、レベル2で約50万円、レベル3で約200万円程度と試算されています。 さらに、導入初期には、開発費や車両改造費、ハード保守費用などがかさみます。
- 技術面での成熟度不足: 完全な自動運転を実現するためには、センサーやAIの精度向上、悪天候や複雑な交通状況への対応など、技術的な課題を克服する必要があります。 例えば、大型トラックは車体が大きく、急停止や急な操舵が難しいという特性があるため、より高度な技術が求められます。 また、合流線の車線減少までの距離や自動運転車の前方障害物検知可能距離などを考慮すると、現状の交通環境下では車線変更が困難な場合があります。
- 法規制の整備: 自動運転トラックの運行に関する法規制や、事故発生時の責任の所在など、法整備の遅れが課題となっています。 レベル4の自動運転は道路交通法で解禁されましたが、自動運転の許可を得るには煩雑な手続きが必要となります。 また、自動運転車が関与する事故の責任を誰が負うのか、車両の製造者、ソフトウェアの開発者、またはユーザーのいずれが責任を負うべきかについて明確な規定が必要です。
- 社会的な受け入れ: 自動運転に対する安全性への懸念や、トラックドライバーの雇用への影響など、社会的な理解を深める必要があります。 自動運転技術の普及には、法規制と社会の受容性が大きな課題となります。 現在の道路交通法体系は、人が運転する前提で構築されており、自動運転に関する法的枠組みの整備が急務です。 さらに、技術に慣れ親しんでいない高齢者や、自動運転技術への不信感を持つ人々の理解を得ることも重要です。
これらの課題解決に向けて、国や自治体による補助金制度の導入、技術開発の促進、法整備の推進、社会的な理解促進のための広報活動などが行われています。
政府の政策と規制
政府は、自動運転トラックの導入を促進するため、様々な政策を実施しています。 例えば、自動運転トラックの導入費用を支援するための補助金制度や、自動運転技術の研究開発を支援するための研究開発プロジェクトへの助成、実証実験の場の提供などを行っています。 また、2025年を目途に、全都道府県で自動運転の社会実験を実施する予定です。 さらに、新東名高速道路の駿河湾沼津―浜松間で、深夜時間帯に専用レーンを設定し、レベル4自動運転トラックの実証試験を開始するなど、高速道路での自動運転技術の先駆けとなる取り組みも進めています。
法規制面では、2023年4月に道路交通法が改正され、レベル4の自動運転が特定の条件下で解禁されました。 これにより、限定された地域や状況において、無人での自動運転サービスの提供が可能となりました。 具体的には、高速道路や、地理情報が詳細に把握されている特定の地域など、システムが安全に走行できる環境が整っている場所とされています。 また、無人自動運転の場合は、遠隔地から監視・操作を行うオペレーターが必要で、オペレーターには一定の教育が義務付けられています。
さらに、政府は「貨物自動車運送事業法」に基づき、自動運転トラックの安全性に関する規制を整備しています。 例えば、自動運転トラックに積載する荷物について、偏荷重が生じないように積載することや、貨物が運搬中に荷崩れ等により事業用自動車から落下することを防止するため、貨物にロープ又はシートを掛けること等必要な措置を講じることを求めています。
自動運転トラックが日本のトラック業界に与える影響
自動運転トラックの導入は、日本のトラック業界に様々な影響を与えることが予想されます。
輸送効率の向上
自動運転トラックは、ドライバーの休憩時間や交代が不要となるため、24時間稼働が可能となり、輸送時間を短縮することができます。 また、AIによる最適なルート選択や速度制御により、燃料消費を抑え、輸送効率を向上させることができます。 これにより、物流の効率化、リードタイムの短縮、輸送コストの削減などが期待されます。
ドライバー不足の解消
自動運転トラックは、ドライバー不足の解消に大きく貢献することが期待されています。 特に、長距離輸送や深夜・早朝の輸送など、ドライバーの負担が大きい業務を自動化することで、人材不足の解消と労働環境の改善につながります。 また、自動運転技術の導入により、高齢者や女性など、これまでトラックドライバーとして活躍することが難しかった人材の活用も期待されます。
事故の削減
自動運転トラックは、人間の運転ミスによる事故を減らすことができます。 AIやセンサー技術により、周囲の状況を常に監視し、危険を予測することで、事故を未然に防ぐことが期待されます。 交通事故の専門機関によると、自動ブレーキシステムを装備した車両は、装備していない車両と比較して事故率が低いことが示されており、昼間の追突事故は65.1%、夜間の人身事故は21.8%減少しています。 自動運転技術の導入により、交通事故の発生率を抑制し、より安全な輸送を実現できる可能性があります。
物流コストの削減
自動運転トラックは、人件費や燃料費などのコスト削減に貢献することができます。 ドライバー不足による人件費の高騰や燃料価格の高騰といった課題を解決することで、物流コストを抑制することができます。 現在のトラック原価の約40%が人件費ですが、自動運転車は車両価格が高くなる反面、この人件費がほぼゼロになります。 また、約20%を占める燃料費も燃費向上により低減されます。 トラック輸送のコスト構造の変化により、物流コストが大幅に削減される可能性を秘めております。
日本のトラック業界における自動運転技術の将来展望
自動運転トラックの普及時期
高速道路でのレベル4自動運転トラックは、2025年度以降に実現し、2026年度以降に社会実装される見込みです。 一般道での自動運転は、技術的な課題や法規制の整備など、克服すべき課題が多く、普及時期は未定です。 しかし、技術開発の進展や社会的なニーズの高まりにより、将来的には一般道でも自動運転トラックが普及していく可能性があります。
自動運転トラックが物流業界全体に与える影響
自動運転トラックの普及は、物流業界全体に大きな変化をもたらすことが予想されます。
- 物流の効率化: 輸送時間の短縮や輸送コストの削減により、物流全体の効率化が図られます。 AIを活用した需給予測や配送ルートの最適化により、積載率の向上や配送時間の短縮などが期待されます。
- 労働力不足の解消: ドライバー不足の解消により、物流業界の人材不足問題が改善されます。 自動運転技術の導入により、24時間体制での運行が可能となり、人手不足を大幅に軽減することができます。
- 環境負荷の低減: 燃料消費の削減やCO2排出量の削減により、環境負荷の低減に貢献します。 自動運転車は、加速と減速を最適化することで、燃料消費を抑え、CO2排出量を削減することができます。
- 新たなビジネスモデルの創出: 自動運転技術を活用した新たな物流サービスやビジネスモデルが創出される可能性があります。 例えば、自動運転車とドローン配送を組み合わせることで、人手不足の解消や配送効率の向上が実現する可能性があります。
主要なトラックメーカーや物流会社の自動運転技術への取り組み
| 会社 | 自動運転技術への取り組み |
| いすゞ自動車 | レベル4自動運転トラックの開発をGatik AIと共同で進めており、2027年度中の量産開始を目指している。 また、新東名高速道路での実証実験にも参加している。 |
| UDトラックス | 2030年までに完全自動運転トラックの量産化を目指し、レベル4自動運転トラックの開発を進めている。 神戸製鋼所と共同で、レベル4を搭載した大型トラックによる自動運搬技術の実証実験を行った。 |
| 日野自動車 | 自動運転レベル4相当の自動運転荷重車両の無人走行試験を開始した。 2025年夏頃を目途に、5台の自動運転荷重車両の無人運行による、舗装の耐久性試験の実施を予定している。 |
| 三菱ふそうトラック・バス | 2019年に大型トラック「スーパーグレート」にレベル2の自動運転機能を導入した。 今後はレベル3をスキップし、レベル4の実用化を目指している。 |
| ヤマト運輸 | 新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間で、自動運転トラックを用いた走行実証を実施した。 自動運転を支援するデータ連携システムを開発し、共同輸送における最適な運行計画立案や緊急事態対応支援などについて検証を進めている。 |
| 佐川急便 | 東京・大阪間の高速道路の一部区間で、T2が開発した自動運転トラックを用いた幹線輸送の実証実験を実施している。 レベル4自動運転による幹線輸送の公道実験は日本初である。 |
| 日本郵便 | セイノーホールディングスとT2が実施する自動運転トラックを用いた幹線輸送の実証実験に2025年1月から参加している。 施設と貨物を提供している。 |
| 西濃運輸 | 2025年1月から3月にかけて、T2、日本郵便、JPロジスティクスと共同で、自動運転トラックによる幹線輸送の実証実験を実施した。 |
結論
日本のトラック業界では、ドライバー不足や物流の効率化、安全性向上といった課題解決に向けて、自動運転技術の導入が積極的に進められています。レベル4自動運転トラックは、2025年度以降に高速道路で実現し、2026年度以降に社会実装される見込みです。
自動運転トラックの普及は、輸送効率の向上、ドライバー不足の解消、事故の削減、物流コストの削減など、様々なメリットをもたらすことが期待されます。また、物流業界全体に大きな変化をもたらし、物流の効率化、労働力不足の解消、環境負荷の低減、新たなビジネスモデルの創出などにつながる可能性があります。
政府は、自動運転トラックの安全性に関する規制を整備するとともに、補助金制度の導入や技術開発の支援など、導入を促進するための政策を実施しています。
今後の展望
自動運転トラックの普及には、まだ多くの課題が残されています。コストの削減、技術の向上、法規制の整備、社会的な理解の促進など、様々な課題を克服していく必要があります。特に、自動運転トラックの導入には高額な費用がかかるため、国や自治体による補助金制度の拡充や、量産化によるコスト削減などが求められます。 また、自動運転技術に対する社会的な不安を払拭するため、安全性に関する情報公開や広報活動などを積極的に行う必要があります。
技術面では、センサーやAIの精度向上、悪天候や複雑な交通状況への対応など、さらなる技術革新が求められます。 特に、一般道での自動運転を実現するためには、複雑な交通環境や歩行者、自転車への対応など、高度な技術開発が必要となります。
法規制面では、自動運転トラックの運行に関する法整備や、事故発生時の責任の所在など、明確なルール作りが求められます。 また、自動運転技術の進化に合わせて、法規制を柔軟に見直していく必要があります。
しかし、自動運転技術は日々進化しており、近い将来、より安全で効率的な自動運転トラックが実現すると期待されます。 例えば、隊列走行技術は、複数のトラックが隊列を組んで自動走行することで、空気抵抗を減らし、燃費向上やCO2排出量削減に貢献できる技術として期待されています。 また、自動運転技術と連携した新たな物流システムの構築や、スマートシティとの連携による効率的な物流ネットワークの構築なども期待されます。
自動運転トラックの普及により、日本のトラック業界は大きく変革し、物流の未来が大きく変わる可能性を秘めています。 自動運転トラックは、単なるドライバー不足の解消や物流効率化のツールではなく、社会全体の持続可能性に貢献する技術として、その重要性を増していくと考えられます。
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